御聖体と聖母の使徒トップページへ    聖人の歩んだ道のページへ     不思議のメダイのページへ    聖ヨゼフのロザリオのページへ



七十  イエズスは墓に葬られた


 ユダヤ人は、安息日の間は、死刑にされた人の死骸を十字架の上に残しておくことはできなかったので、その日のうちにイエズスさまのなきがらを、十字架からおろすよう、ピラトに願いました。兵士たちは十字架につけられた人々が死んだことを確かめるために、盗賊の足を折り、それからイエズスさまのところへ来てみると、もはや息絶えておられました。一人の兵士がそのわきを槍でつきとおしますと、そこから、血と水が流れ出ました。

イエズスさまの弟子の一人に、衆議所の役人でアリマテアのヨゼフという人がいました。ヨゼフは、日が暮れてからそっとピラトの所へ行き、イエズスさまのおんなきがらをひきとりたいと願いました。それからそれを十字架から取りおろして亜麻布に包み、刑場の近くの庭に、以前から自分のために造らせておいた新しい墓に葬り、入り口に大きな石のふたをしておきました。

 つぎの朝、大祭司たちがやってきて石のふたに封印をし、兵士をおいてその番をさせました。


一 聖金曜日(ご復活祭前の金曜日)はイエズスさまが十字架でお亡くなりになったことを記念する大事な日です。


二 聖土曜日には、イエズスさまが墓の中においでになったことを思います。


三 使徒信経の第四条に、「
ポンシオ・ピラトの管下にて苦しみを受け、十字架につけられ、死して葬られ」とあります。


四 使徒信経の第五条に、「
古聖所にくだりて」とありますが、これは、イエズスさまがお亡くなりになったとき、その霊魂は、古聖所へおいでになったということです。古聖所というのは、世界の始めからよい人たちの霊魂が、イエズスさまが救いのみわざをなしとげられるのを待っていた所です。


五 ロザリオの苦しみの玄義は、ゲッセマネからご死去までの、イエズスさまのおん苦しみを黙想するものです。


六 ロザリオ 苦しみの玄義  (公教会祈祷文 134ページ)

 第一玄義  この一連を献げて、主がゲッセマネの園にて死するばかり憂いたまいたるを黙想し、聖母のおん取り次ぎによりて、罪をつうかいする恵みをこい願わん。

 第二玄義  この一連を献げて、主がむち打たれたまいたるを黙想し、聖母のおん取り次ぎによりて、罪を償う恵みをこい願わん。

 第三玄義  この一連を献げて、主がいばらの冠をかむらせたまいたるを黙想し、聖母のおん取り次ぎによりて、侮辱を恐れざる恵みをこい願わん。

 第四玄義  この一連を献げて、主が十字架をにないたまいたるを黙想し、聖母のおん取り次ぎによりて、苦難を甘んじ受くる恵みをこい願わん。

 第五玄義  この一連を献げて、主が十字架にくぎづけにせられて死したまいたるを黙想し、聖母のおん取り次ぎによりて、救霊の恵みをこい願わん。


七 聖歌 (ロザリオ第二環)  公教聖歌集 375  みよや


 
十字架の道行きの祈り  (公教会祈祷文 107ページ)

 十字架の道行きの祈りは、イエズスさまのご苦難とご死去を黙想するために、そのようすを表した十四のご絵やご像の前で行う祈りです。このお祈りは、ちょうどイエズスさまのご苦難の道をいっしょに歩きながらするような祈りですから、それで道行きといい、たいへんお恵みの多い祈りです。この祈りはとくに四旬節中によく行われますが、そのほかいつしても、たいへんによいお祈りです。なお、お祈りをひとりでする時は、つぎに書いてあるとおりにしなくてもよいので、ただ、それぞれのご絵の前に立ち、その場面を思い浮かべ、痛悔の心を起こして祈れば、それでも十分なのです。つぎの祈りは、公教会祈祷文を、やさしくしたものです。


 十字架の道行きをする前の祈り


 「救い主イエズス・キリスト。あなたは私たちの罪をあがなうために、エルサレムで残酷な苦しみをお受けになり、はずかしめられ、十字架をおってカルワリオに登り、ころもをはがれてくぎづけにされ、二人の盗賊の間にあげられて、お亡くなりになりました。もし私が、あなたのこれほど苦しまれた所に行き、おん血に染んだ道をごいっしょに歩いたなら、くらい私の心も、あなたのおん愛の深いことを知り、心からありがたく思うでしょう。そしてあなたのおん苦しみのもとである、自分の罪の恐ろしさを知り、心から悔やみ悲しむことでしょう。けれども今の私にはそれができませんから、せめてカルワリオになぞらえた、この十字架の道を行こうと思います。

 けれども神さまのお恵みがなければ、愛の心も痛悔の心も、起こすことはできません。どうぞ私にお恵みをください。イエズスさまのおん苦しみを私の心にも感じさせ、マリアさまや弟子たちのおん悲しみを、私の心にもしみとおらせてください。どうぞ私を、今から全く罪をきらい、イエズスさまのおん愛に愛をもって答え、イエズスさまのおんために、進んで苦しみを受けられるようにしてください。ふさわしい心で、この十字架の道を行かせてください。そのおん恵みを私にも、煉獄の霊魂にもお与えください。

 マリアさま。十字架にくぎづけにされたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください」

 第一留 イエズスは死刑の宣告を受けられた


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」(各留のはじめに同じようにとなえる)

 「ユダヤ人はイエズスさまを、大祭司カヤファの所へ引いてゆき、あざけり、顔につばきを吐きかけ、たたいたりしてから、ピラトの裁判に渡しました。ピラトはユダヤ人をなだめるつもりで、イエズスさまを石の柱に縛り、むち打ちの刑にし、はてはいばらの冠をおしかぶせたので、その傷から血が流れ出ました。けれども人々は少しも哀れと思わず『十字架につけろ、十字架につけろ』と、ますます叫び狂うので、ピラトも仕方なく、とうとうイエズスさまに死刑を言い渡しました。

 イエズスさま。あなたを死刑にしたのは、ピラトやユダヤ人ではなく、実は私たちがしたのです。私たちの罪のために、あなたは死刑にされたのです。今も、私たちが罪を犯すたびに、あなたに大きな苦しみをさせ、死刑に宣告することになります。どうぞ、私たちの罪をお赦しくださいますように。アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」 (各留の終わりに同じようにとなえる)


 第二留 イエズスは十字架をになわれる

 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「人々はイエズスさまを外にひき出し、そまつな木で造った十字架を、そのおん肩にになわせました。イエズスさまは傷をもいとわず、いやがるけしきもなく、引きよせてご自分からこれをにない、やさしい勘忍深いごようすで、人々に引かれて行きました。

 イエズスさま。あなたは十字架をになわされるようなおかたではありません。それは、当然私たち罪びとこそになうべきものです。私たちは神さまのみむねに従って、この世の苦しみや難儀を受けなければならない者ですから、どうぞイエズスさまをお手本にして、おとなしく、がまんづよく、この苦しみに耐えられるよう、お助けください アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」 

 
 第三留 イエズスは始めて倒れた


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「イエズスさまはむち打たれ、いばらの冠で頭をさしつらぬかれたので、その傷あとが破れ、血まみれになってお歩きになりました。そのためにからだも弱り、足がよろめき、とうとうかがんで地に倒れました。

 イエズスさま。あなたを倒したのは、全く私たちです。私たちが罪を犯したからこそ、あなたはこのような苦しい目に会われました。私たちは心からこのことを悲しんでいます。どうぞあなたのお受けになったご苦難の功徳によって、私たちを罪から救ってくださいますように。アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」

 第四留 イエズスさまは聖母に会われる

 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「マリアさまは、おん子イエズスさまが死刑の宣告を受けた事を聞き、いそいでおいでになる途中で、この一行に会いました。そのときごらんになったイエズスさまは、どんなお姿だったでしょう。昔、大天使のお告げを受けた時とは似てもつかず、血に染まって目もあてられない有様でした。マリアさまは深く悲しまれましたが、どうすることもできません。ただおん子の苦しみにご自分の悲しみをそえて、私たちのために、おん父に献げられました。

 イエズスさま。これほどにマリアさまを悲しませたのは、全く私たち罪びとです。けれども、イエズスさまは限りなく哀れみ深いおかたですから、どうぞ私たちの罪をお赦しください。そして私たちが、イエズスさまとマリアさまを慰めるために、力をつくすことができますように。 アーメン。」


 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第五留 イエズスはシレネのシモンに助けられる


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「こうしてイエズスさまは歩いて行かれるうちに、気力は次第に弱って、もう倒れそうになられました。けれどもだれも助ける者はなく、かえってますますののしったりたたいたりするだけなので、もはやがまんできず、気を失いそうになられました。ちょうどその時、シレネのシモンが通りかかったので、人々はむりにシモンに十字架をになわせ、なおもイエズスさまを引きたてて歩かせました。

 イエズスさま。あなたが十字架をになって力が弱られたのは、全く、私たちの罪の重さのためでした。私たちこそ、シモンに代わって十字架をになわねばならない者です。どうぞ今から私たちの一切の苦しみを、イエズスさまの十字架の分として、受けさせてくださいますように。 アーメン」


 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第六留 イエズスは顔を布に写された


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「イエズスさまはなおも続けて歩いて行かれるうちに、おんからだもおん顔も、血と汗で真っ赤になりました。それでも人々は一向お気の毒とは思わず、ますます荒れ狂って騒ぐばかりです。そのとき、ベロニカという女の人が人々の中から走り出て、布をイエズスさまに献げました。イエズスさまはそれで顔をおふきになり、お顔の形をその布につけて返されました。

 イエズスさま。どうぞ私たちの心にお恵みをお与えください。十字架のおん苦しみの功徳を、私たちにもおうつしください。私たちは弱い者ですが、どうぞベロニカにならって、世間の人のあざけりにかまわず、ただ一心に神さまを敬うことができますように。 アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第七留 イエズスはふたたび倒れた

 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「イエズスさまは、血が流れ出るとともに、おん力も弱り、おんあゆみも一足も進まず、息たえだえになって、うつぶせに倒れられました。それでもユダヤ人は哀れと思わず、捨てもののように、打ちたたきながら、むりに起こしてひいて行くのでした。

 イエズスさま。私たちはどこまでも、あなたのおん血のあとを慕って行きます。イエズスさまが二度お倒れになったのは、私たちがどんな悲しい目に会っても、失望しないようにとです。天国へ行く道は十字架の道、苦しみの道ですから、どうぞ私たちも、イエズスさまのおん苦しみの功徳によって、強い心で歩きとおせますように。 アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第八留 イエズスは婦人たちを慰める


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「この時、イエズスさまのあとからは、おおぜいの人たちがついて来ましたが、中でも婦人たちは、涙にむせびながらおともをしました。イエズスさまは。こういう婦人たちをごらんになって、ご自分の苦しみをも忘れ、慰めておっしゃいました。『婦人たちよ。私のために泣くことはいらない。それよりも、あなたがたとあなたがたの子孫のために泣きなさい。生木でさえこのような有様だから、まして枯木は、どうなることだろうか。』

 イエズスさま。あなたは罪もないのに、あんなにひどい苦しみをお受けになりました。私たちは罪のために、神さまから切り離された枯木のようなものですから、このままでは、きっと地獄の火に燃やされるに違いありません。どうぞ私に、自分と人の罪とのために、痛悔の涙を流せるようなお恵みをくださいますように。アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第九留 イエズスは三度倒れる

 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「カルワリオの上にお着きになったとき、イエズスさまはまた倒れました。それは、ご自分が人間の罪のために、これほど苦しまれたのに、人々はそれをなんとも思わず、お恵みをふりすててしまわないか、と思われ、深く悲しまれたからでした。それでもイエズスさまは。どこまでも人間を助けようと思われ、その苦しみをがまんなさいました。

 イエズスさま。あなたはなぜ、幾たびもお倒れになったのでしょうか。これは私たちが何度も罪を犯し、たとえ痛悔を起こしても、すぐまた重ねて罪を犯すからです。イエズスさまは三度だけで、もうお倒れになりませんでした。ですからどうぞ私たちも、イエズスさまのおん功徳によって、これから後は二度と罪に陥らぬようにしてください。アーメン。

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第十留 イエズスは着物を剥ぎとられた


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「ユダヤ人たちは、カルワリオで、イエズスさまの着ていたものを脱がせて裸にしました。着物は血のりで傷にはりついていましたから、その痛さは、とてもがまんできないほどでした。いばらの冠も、途中は邪魔になったのではずしておきましたが、それもまたもとのように押しかぶせました。これも随分苦しいことでしたが、人々の前で裸にされ、恥ずかしめられたのは、それ以上のおん苦しみでした。

 イエズスさま。もし私に、みこころにかなわないことがありましたら、どうぞあなたの着物のようにぬぎ捨てさせてください。特に傲慢、邪淫、貪欲などの悪い心をぬがせ恩恵の着物を着させてくださいますように。アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第十一留 イエズスは十字架にくぎづけにされた


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「イエズスさまは、十字架の上に横たわり、ご自分から手足をのばしました。ユダヤ人たちはくぎを押しあてて金づちで打ちつけました。この時のおん苦しみはどんなだったか、想像もできません。肉は破れ血は流れて、力はつきはてた上に、のどのかわきもがまんできないほどでした。ユダヤ人はそれを気にとめる様子もなく、イエズスさまをくぎづけた十字架を押し立て、根本を固めて行ってしまいました。聖母は涙にむせびながら、始めから全部をごらんになり、みなが行ってしまってからも、十字架のそばに立っておられました。

 イエズスさま。あなたは私たちのために、十字架にくぎづけにされたのです。ですから私たちもイエズスさまのために、十字架につけられたいと思います。どうぞ、どんな苦しみがふりかかってきても、あなたのための十字架と思い、喜んでそれをがまんし、あなたから離れないお恵みをくださいますように。アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第十二留 イエズスは十字架の上でなくなられた


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「イエズスさまの十字架は、二人の盗賊の間に立てられました。イエズスさまは、自分を苦しめた者のために、天のおん父に向かって『この人たちは悪いと知らずにやったことですから、赦してやってください』とお祈りになりました。これを聞いていた一人の盗賊は『あなたが天国においでになったら、どうぞ私のことを思い出してください』と願いました。イエズスさまは、『きょう、おまえは楽園で、私といっしょにいることになる』とおっしゃいました。また、十字架のもとに立っておられた聖母と弟子たちをごらんになり、マリアさまには『あなたの子はここにいます』と言われ、ヨハネには『あなたの母はこのかただ』と言われ、やがて、『すべては成しとげられた』とおっしゃって首をたれ、息たえられました。その時、日はまだ高かったのですが、突然、あたりが夜のように暗くなりました。

 イエズスさま。あなたが亡くなられたとき、地震が起こり、あたりはまっくらになり、多くの墓は開かれ、死人がよみがえり、岩が割れました。こういうことを思って、心を打たれない人は、かたくなな人です。私たちはも二度と罪を犯しません。どうぞ私も、イエズスさまといっしょに、この世の楽しみから死ぬことができますように。アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第十三留 イエズスは十字架からおろされた

 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「なくなられたイエズスさまのおんからだは、夜になって、十字架からおろされました。マリアさまはなきがらをお抱きになり、そのおかお、手足や脇腹の傷をごらんになって、気を失うかと思われるほど、嘆き悲しまれました。

 イエズスさま。これほどにもマリアさまを悲しませたのは、私たちです。私たちはいっそう自分の罪を悔やみ悲しみます。マリアさまは私たちにとってもお母さまですから、私たちもマリアさまのよい子となって、お慰めできますように、お守りください。アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 第十四留 イエズスは墓に葬られた


 「イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し、賛美します。」

 「そのとき、ニコデモとアリマテアのヨゼフという人は、ピラトの許しを得て、マリアさまからイエズスさまのおんからだを受け、きれいな布に包んで、新しい墓へていねいに葬りました。

 イエズスさま。私たちの罪もあなたのお墓にいれてください。私たちは心の中にイエズスさまをいただいて、今からのちは、この世の楽しみに決して気を奪われることなく、天国で神さまをおがむことができるようになさってください。アーメン。」

 「天にまします」 「めでたし」 「願わくは」

 主われらをあわれみ給え。われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。アーメン。

 「マリアさま。十字架にくぎづけられたおん子の傷を、私の心にも深くしるしてください。」


 十字架の道行きの後の祈り


 私のただ一つの望み、世の救いと栄えの十字架を敬います。どうぞ十字架によって、信心深い人にはますますお恵みがまし、罪を犯した人も赦されますように。救いのみなもとである三位一体の神さま。どうぞすべての霊魂が、みな、主をほめたたえますように。イエズスさまは私たちに、十字架の勝利をお与えくださいましたから、どうぞその報いをもくださいますように。

 イエズスさま。あなたは尊い十字架で、世をあがなわれましたから、私はあなたを礼拝し賛美します。

 悲しみの底まで味わわれたマリアさま、私たちのためにお祈りください。きりすとの救いのおん約束に、私たちもあずからせてください。

 神さま。主イエズスさまは、神さまの子供である私たちのために、悪人に売られ、十字架の苦しみに会うことを、いとわれませんでした。どうぞ神さまの子である私たちのことを、いつもみこころにかけてください。

 イエズスさま。あなたが苦しみを受けられたとき、苦しみのつるぎは、おん母マリアさまのみこころをつらぬきました。どうぞマリアさまの取り次ぎによって私たちの上に今も臨終のときも、いつも神さまのおん哀れみをお願いくださいますように。アーメン。

 私たちのためにむち打たれ、十字架をにない、十字架にくぎづけられたイエズスさま。どうぞ私たちを祝福してください。アーメン」


  聖週間


一 毎年ご復活祭の前の四十日が四旬節ですが、四旬節の最後の一週間、つまり、ご復活祭のすぐ前の一週間を聖週間といいます。聖週間中、信者は特別にイエズスさまのご苦難とご死去のことを深く考え、いろいろの祈りをします。そのために教会では、特別な式が行われます。


二 枝の主日

 聖週間は枝の主日に始まります。枝の主日はご復活祭一週間前の日曜日で、この日はイエズスさまが人々のさかんな歓迎を受けてエルサレムに入られたことを記念します。その時ユダヤ人たちは手に手にしゅろの枝をもってイエズスさまを迎え、「ホザンナ(ばんざい)」と言って救い主を賛美しました。それでこの日には御ミサの前に枝の祝別があり、信者は祝別された枝をもって、聖歌を歌いながら行列します。

 この日の御ミサの福音には、マタイ福音書のご受難のところが読まれます。


三 聖火曜日と聖水曜日の御ミサの福音のときは、マルコ福音書とルカ福音書のご受難のところがそれぞれ読まれます。


四 聖木曜日

 
聖木曜日はイエズスさまのご死去の前日で、この日は夕方から御ミサが行われます。この日、イエズスさまは弟子たちと最後の夕食をなさり、はじめて御ミサを定めて、天のおん父にご自分をささげ、弟子たちに御聖体をお授けになったのでした。それでこのことを記念するために、聖木曜日の御ミサは特に荘厳に行われます。この日はどこの教会でも、一人の司祭しか御ミサをあげることはできません。御ミサのグロリアの時は、鐘をならします。それからあとは、聖土曜日の夜の聖式まで、鐘も楽器もいっさい使いません。聖変化のとき、司祭は二つの大きいホスチアをつかい、一つを拝領して一つを残します。


五 御ミサが終わってから、司祭は残ったホスチアをカリスに入れ、行列をつくって副祭壇におさめ、本祭壇の飾りをみな取り除いて、御聖櫃の戸も開け放ちます。最後の晩餐が終わってからイエズスさまはオリーブ山に行かれ、血の汗を流して祈られ、そして、兵士たちにとらわれて、衆議所にひいて行かれたのでした。信者はその時のイエズスさまのみこころを思って、ともに悲しみます。


六 聖金曜日


 聖金曜日はイエズスさまが、すべての人のために十字架の上でなくなられた、一年中で一番悲しい記念の日です。この日御ミサはあげられません。イエズスさまが午後三時ごろなくなられたことを記念するために、式は午後に行われます。式の始めは聖書奉読で、司祭は黒の祭服で祭壇に上り、ヨハネ福音書のご受難のところを荘厳に読み上げます。つぎが祈願式で、司祭は教会や教皇さま始め、世界中のずべての人々のために荘厳な祈りをささげます。そのつぎは十字架崇敬式で、司祭は十字架にかぶせてあるおおいをとり、祭壇の前におき、くつを脱いでその前に行き、ひざまづいてご像の足に三度接吻します。最後に御聖体拝領の式が行われます。またこの日はイエズスさまのご受難とご死去を思って大斉日になっています。


七 聖土曜日


 聖土曜日は、イエズスさまのおんからだが墓の中におられたことを記念し、朝から何も式は行われませんが、夜になってから、ご復活祭前夜の式が荘厳に行われます。式はまず、ご復活の火とろうそくの祝別から始まります。そのあと、信者はおのおのろうそくをもって聖堂に入り、それから、司祭がご復活の火の美しい賛歌を歌います。そのつぎは聖書奉読の式で、世界の始めからの、救いについての預言書が読み上げられます。そのあと洗礼水の祝別、諸聖人の連祷、洗礼の約束の改めがあり、ひきつづき、御ミサに移ります。この御ミサのグロリアの時から、鐘も楽器もいっせいに鳴らされ、四旬節から歌われなかったアレルヤも、喜びをこめて歌われます。また御聖体拝領のあとも、特に喜びの賛歌が歌われ、もはや、つぎの日のイエズスさまのご復活の喜びを、あらかじめ思い起こすのです。


八 大きい教会や修道院、神学校などでは、聖週間の聖式は特に荘厳に行われます。信者は聖週間の聖式にはなるべくあずかるほか、特に聖木曜日から聖土曜日までの間には、御聖体訪問をするのは、たいへんよいことで、多くのお恵みがいただけるでしょう。

 聖週間じゅうはよくお祈りし、罪を避けることはもちろん、イエズスさまのご苦難とご死去を思って、たとえばおやつをがまんするなど、自分も何かぎせいをささげるのも、たいへんよいことです。


次へ       前へ戻る        聖教の本 目次へ